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線虫がん検査『N-NOSE』がん種適応拡大やAI活用で精度向上を発表

株式会社HIROTSUバイオサイエンスは、同社が展開する線虫がん検査『N-NOSE』の最新状況を伝える記者説明会「N-NOSE Innovation Update~線虫がん検査 N-NOSE の最新状況について~」を9月20日(金)に都内にて開催しました。

記者説明会では、株式会社HIROTSU バイオサイエンス 代表取締役 広津 崇亮氏が登壇し、『N-NOSE』の第三者機関による実社会データをはじめ、新製品の進捗状況などが発表されました。また、様々な社会問題に関してテレビをはじめ各種メディアに科学的見地から解説を行っている近畿大学の大貫宏一郎博士がオンラインで出演しました。

線虫がん検査『N-NOSE』とは?

『N-NOSE』は、嗅覚に非常に優れた線虫C.elegansが、人の尿中に含まれるがん特有の匂いを高精度に探知することを利用した、がんの一次スクリーニング検査です。飼育コストがほとんどかからない線虫を利用することで「低コスト」、尿を提出するだけという「簡便性」、一度の検査で「全身網羅的」にがんリスクを調べることができるとして、これまで70万人以上が受検、2000社以上の企業が導入しています。

日本核医学会PET分科会 サマーセミナーで発表された『N-NOSE』の実社会データ

日本核医学会PET分科会のサマーセミナーにて発表された『N-NOSE』の調査結果によると、『N-NOSE』高リスク者の「真の」陽性的中率は11.7%とされ※、一次スクリーニングとしての『N-NOSE』は有効であることがわかりました。同調査は、229のPET-CT医療施設にアンケート調査を取り、102施設からの回答から得たもので、『N-NOSE』高リスク者に対してPETを行い、最終的にがんと診断された人の割合が計測されたものです。広津氏は「第三者の医療機関の調査により、N-NOSEを実社会で使った時の精度は非常に高いことが証明されたと考えている」と述べました。


※陽性的中率とは、感度、特異度、有病率によって算出されるもので、がん検査で陽性の判定後、精密検査を受けてがんと診断される確率です。有病率が高いと陽性的中率は上がり、有病率が低いと陽性的中率は下がる性質があります。また、『N-NOSE』のような一次スクリーニング検査の場合、がん診断のためには二次検査が必要であり、その二次検査の精度も影響するため、「見かけの(偽の)」陽性的中率となります。サマーセミナーで発表された『N-NOSE』高リスク者の「見かけの(偽の)」陽性的中率は2.09%、国立がん研究率センターの報告によるPET-CTの感度は17.8%で、PET-CTの感度を補正すると、『N-NOSE』高リスク者の「真の」陽性的中率は11.7%となると計算されています。

一方で、オンライン出演した大貫博士は「この検査は、一研究者として大変期待をしている方法です。しかしながら、(分科会が行った)サマーセミナーは違和感のある発表でした。『N-NOSE』の精度の高さを理解できておらず、計算間違いや精度が低いような偏向報道のようなものありました。学会からは変わったもののような存在なのかなという気がしました」と客観的な視点で、『N-NOSE』に対する理解不足を懸念しました。そして最後は会場に集まった記者らに対し、「正しいことをきっちり理解し、偏向報道がなく、こういった日本の技術を応援してくださることを期待しています」と述べました。

適応がん種を拡大した新商品を発売予定

これまで線虫が反応することがわかっているがん種は15種でしたが、今回の発表で、小児がん、甲状腺がん、舌がん、歯肉がん、咽頭がん(声門がん含む)、皮膚がん、消化管間質腫瘍(GIST)、血液がん(悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・白血病含む)が追加した全24種に適応拡大した新商品を年内に発売することが明らかになりました。また、一次スクリーニングは、がんの有無のみを調べる検査で、がんの可能性がある場合はがん種を特定する二次スクリーニングを行い、精密検査を受けて診断するという流れになりますが、同社では現在、がん腫を特定する(二次スクリーニング)検査も開発して実用化を始めているそうです。

AIを活用した画像解析で精度向上とがん種特定へ

同社では、これまでの検査で取ってきた線虫嗅覚行動の膨大な画像データを、新たにAIを活用し、精度向上とがん種特定に向け研究開発してとのことです。

精度向上に関しては、感度と特異度を示すグラフであるAUC曲線を比較。AUC 0.8以上が素晴らしい検査とされるところ、これまでの技術ではAUC 0.845、AIを活用することでAUC 0.91と向上が確認できたとのこと。

さらにがん種特定については、これまでは遺伝子組み替え株を作ることによってがん種データを作ってきたところ、今回AIで解析された画像だけでがん種を特定できるかということに挑戦。すると、遺伝子組み換え株と同じ、0.8を超えるぐらいの精度で特定できるということが判明。遺伝子組み換え株を作ることを集中してきたこれまでの研究を、AI技術の活用により、がん種定検査のレパートリーを増やすスピードはおそらく2倍、3倍に上がるだろうとのことです。今後、肺がん検査、前立腺がん検査に関して実用化を目指していくとのことで、今後の動向に注目です。