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歴代受賞者が集結! 社会課題解決に挑む若手起業家の祭典「Youth Co:Lab ソーシャル・イノベーション・チャレンジ 日本大会2025 歴代受賞者グランプリ Demo Day」開催

2024年11月20日(木)、東京・目黒のアマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(AWS)にて、『Youth Co:Lab ソーシャル・イノベーション・チャレンジ 日本大会2025 歴代受賞者グランプリ Demo Day』が開催されました。

「Youth Co:Lab(ユース・コーラボ)」は、国連開発計画(UNDP)とシティ・ファウンデーションがアジア・太平洋地域で共催する、若者による社会イノベーションと社会起業を支援するプログラムです。2017年の発足以来、28の国と地域で活動を展開し、2万8000人以上の若手社会起業家や志望者を支援してきました。日本では2019年に活動を開始し、SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けたビジネスアイデアを競うコンテストを実施しています。

7年目を迎える今回は、これまでの受賞者のみを対象とした「歴代受賞者グランプリ」という特別企画として開催されました。過去の受賞者32チームの中から選抜された7組のファイナリストが登壇し、受賞後の事業の成長と、さらなる未来へのビジョンをピッチ形式で発表しました。

会場には、主催のUNDPとシティ・ファウンデーションに加え、共催・協力団体である東京大学、CVC財団/CVCキャピタル・パートナーズ、AWS、八千代エンジニヤリング株式会社、UNHCR駐日事務所、そして後援の文部科学省など、多岐にわたるセクターからゲストが集結。熱気に包まれた会場の様子をレポートします。

「持続可能ではない現状を変えるのは、若者のアイデアと熱意」

開会にあたり、まずはシティグループ証券株式会社、シティバンク エヌ・エイ東京支店 執行役員・高澤知子コミュニケーション部門長が登壇しました。

高澤氏は、今回の審査について「受賞者の皆さんが、時代や社会の変化に合わせて事業を進化させてこられた中での選出は本当に大変でした」と振り返り、「次世代を担う若手社会起業家の皆様の未来へつながる貴重な体験となることをお祈りしております」とエールを送りました。

続いて、来賓として青柳仁士衆議院議員より祝辞が述べられました。

元UNDP職員であり、自身も起業経験を持つ青柳氏は、「なぜ『持続可能な開発目標(SDGs)』が必要なのか。それは、今の社会のビジネスモデルのままでは持続可能ではないからです」と指摘。「これまでのやり方を続けていては何も変化は起きない。だからこそ、新しい社会の仕組みやビジネスのやり方を生み出すソーシャルイノベーションが必要であり、それを担うのが皆さんのような社会起業家のアイデアと熱意です」と、参加者を力強く鼓舞しました。

ビジネスで社会を変える7組の熱いピッチ

ここからは、グランプリの座をかけて行われた7組のファイナリストによるピッチの模様をお届けします。

①「新興国AI×IT人材育成・就労支援 IMANI Hacking」
株式会社Darajapan 角田弥央氏

トップバッターを務めたのは、タンザニアに拠点を置き、新興国の人々の雇用創出に取り組む株式会社Darajapanの角田氏です。現地で3児の母として暮らす角田氏は、若者や女性が学びから雇用へ移行できない現地の構造的な課題を指摘。「IMANI Hacking Platform」を通じ、IT・AIスキルの教育だけでなく、日本の倫理観を取り入れたソフトスキルの研修、そして就職支援までを一気通貫で提供しています。

角田氏は「支援される側ではなく、社会を動かす側へ」という信念のもと、アフリカの高度人材を日本企業へ送り出す事業や、オフショア開発事業の成長について語り、日本とアフリカ双方の課題解決を目指す姿勢を強調しました。

②「植物におけるストレス応答物質『グルタチオン』で食料安全保障を実現」
株式会社WAKU 姫野亮佑氏

続いて登壇したのは、株式会社WAKUの姫野氏です。3年前の受賞時は林業苗への活用を提案していましたが、今回は「グルタチオン」の自社製造と農業利用へと大きくピボットした事業を発表しました。

猛暑による作物の不作や価格高騰が社会問題となる中、植物のストレス耐性を高める「バイオスティミュラント」としてのグルタチオンの効果を紹介。医薬品グレードではなく農業用に安価に製造する技術を確立し、キャベツやネギなどの実証実験で著しい効果を上げていることを報告しました。「2027年には自社プラントを稼働させ、まずは日本で実績を作り世界へ展開する」と力強く語りました。

③「『給水』から始まる未来づくり」
一般社団法人Social Innovation Japan Mariko McTier氏

オンラインで登壇したMariko McTier氏は、日本初の無料給水アプリ「mymizu」のこれまでの軌跡と今後の展開について発表しました。2019年の受賞当時から大きく成長し、現在は世界50カ国以上、20万箇所以上の給水スポットを掲載するプラットフォームへと進化。自治体や大手企業との共創プロジェクトを次々と成功させています。今後は、蓄積したデータを活用したライセンス事業や、熱中症対策としての給水スポット活用など、「環境問題を超えて人の命を守るインフラ」への進化を目指すと語りました。

④「世界中の学校とオンラインでつなぎ、誰もが教育を受けられ、戦争のない平和で多様な世界の実現」
株式会社With The World 五十嵐駿太氏

株式会社With The Worldの五十嵐氏は、世界67カ国の学校をつなぐオンライン国際交流授業について発表しました。「世界の果てまで教育を届け続ける」をミッションに、日本の学校から得た収益の一部をフィリピンやザンビアなどの教育支援に充てる循環型のビジネスモデルを構築しています。現在は、オンラインでの交流にとどまらず、実際に現地を訪れるスタディツアーや、メタバース空間での不登校支援など、事業の幅を拡大。文部科学省の方針も追い風に、教育を通じた平和構築への熱い想いを語りました。

④「デジタルデバイドのアフリカ農村部向けデジタルサービスハブ」
株式会社Dots for 外村璃絵氏

アフリカの農村部で通信インフラを提供する株式会社Dots forの外村氏は、デジタルデバイド(情報格差)の解消に挑む事業を紹介しました。「Dots for Box」というデバイスを村に設置し、通信環境だけでなく、独自の信用スコアを活用した家電やバイクの分割払いサービスなどを展開しています。

ベナンとセネガルの400村でサービスを提供し、利用者の収入向上に貢献。今後は、日系企業との連携による実証実験や、ウガンダの難民居住区での展開も予定しており、「ラストフロンティアのデジタル化」を推進していく姿勢を示しました。

⑤「地球上の信用格差を解消する挑戦」
株式会社HAKKI GROUP 小林嶺司氏

株式会社HAKKI GROUPの小林氏は、ケニアやインドなどでタクシードライバー向けにマイクロファイナンスを提供する事業について発表しました。
独自のアルゴリズムによる信用スコアリングと、車両の遠隔制御技術を組み合わせることで、これまで金融アクセスがなかった人々への融資を実現。返済率は98%を超える高水準を維持しています。インド事業の黒字化や、インパクト投資の獲得など、急速な事業成長を遂げており、「誠実な努力が報われる世界を作る」というビジョンを掲げました。

⑥「次世代型EdTech:絵本と対話で『伝える力』を育むオンラインスクールYOMY!」
株式会社YOMY 安田莉子氏

最後に登壇したのは、株式会社YOMYの安田氏です。日本の子供たちの「自己表現力の低さ」という課題に対し、絵本と対話を組み合わせたオンラインスクールを展開しています。ハーバード大学でも研究されている「ダイアロジック・リーディング」という手法を用い、大学生メンター(クルー)が子供たちの「伝える力」を引き出します。受賞後の変化として、海外展開を見据えた多言語対応や、広告運用によるユーザー急増などの実績を報告。「子供たちが国を超えて『好き』を語り合える次世代の教育インフラ」を目指すと締めくくりました。

トリプル受賞の快挙も! 熱狂の表彰式

厳正な審査の結果、以下のチームが各賞を受賞しました。受賞チームには、メンタリング支援や賞金などの特典が授与されます。

UNHCR賞:株式会社Dots for

AWS女性社会起業家賞:一般社団法人Social Innovation Japan(Mariko McTier氏)

CVC賞:株式会社YOMY、株式会社With The World

八千代フューチャーインパクト賞:株式会社HAKKI GROUP、株式会社Darajapan、株式会社Dots for

観客賞:株式会社With The World

チャレンジ賞(第3位):株式会社WAKU

優秀賞(第2位):株式会社HAKKI GROUP

最優秀賞(グランプリ):株式会社With The World

CVC賞、観客賞に加え、見事グランプリを獲得し、トリプル受賞の快挙となった株式会社With The Worldの五十嵐氏は、最優秀賞のトロフィーを受け取り、感慨深げに次のようにコメントしました。


最優秀賞・五十嵐氏「新しい社会を作っていく」
「このような名誉ある賞をいただいて本当にありがとうございます。今日の登壇された方々も、本当に社会を変えていく素晴らしいリーダーであると、プレゼンテーションを聞いて感じていました。今日登壇されているリーダーの方々と共に、新しい社会を作っていく、そんな思いで頑張っていけたらと思います。そして、ついてきてくれているチームメンバーを信じて、これからも頑張っていきたいと思います」

誠実な努力が報われる世界へ

閉会の挨拶では、UNDP駐日代表事務所のハジアリッチ秀子代表が登壇しました。ハジアリッチ代表は、「世界的にSDGsへの批判的な声も聞こえる中、今日のイベントには本当に勇気づけられました」と語り、各プレゼンターの「行動主体性(Agency)」と、アイデアを共有し合う「透明性(Transparency)」の重要性に言及しました。

また、HAKKI GROUPの小林氏の言葉を引用し、「『誠実な努力が報われる世界』という言葉が非常に心に響きました。UNDPとしてもその言葉を大事に頑張っていきたい」と締めくくり、会場は温かい拍手に包まれました。

7年目を迎え、より洗練され、力強さを増した若手社会起業家たちの姿は、持続可能な未来への確かな希望を感じさせるものでした。彼らの今後の活躍から目が離せません。