食材の宝庫、静岡県。食の感度の高い東京でも静岡県産の食材を多く見かけます。しかし ながらその食材を美味しく食べさせてくれる食事処が少ないのが現状。その中でも静岡県出身の筆者が自信を持っておすすめするのが「新日本料理おぶね」。この道39年、東京の有名店で修行の後、地元菊川の地に根を下ろした高木大将の食に対する飽くなき探究心と人柄に触れれば瞬時にファンになってしまう。和食の基本「出汁」を武器にあらゆる食材を美食へと変化させるおまかせコースを、サービス満点のペアリングとともに。
おまかせコースをカウンターで
大小さまざまな個室のある「新日本料理おぶね」ですが、食を120%堪能するのであれば高木大将の華麗な技術が目の当たりにできるカウンターがおすすめです。
コースの始まりは「氷梅」。10日間かけて銅鍋でじっくり煮込み、梅酒と赤ワインで仕上げる冷んやり夏の逸品。
菊川のつるむらさき、胡麻豆腐
吸い込まれそうな美しい紫色の出汁に、胡麻豆腐とつるむらさきのおひたし。あまりの美しさに食べることを忘れてしばし見惚れてしまった筆者。この美しい紫はつるむらさきの色だそうです。
鱧
高木大将の包丁さばきが鮮やか!カウンター席の特権です。さらに目の前で焼き上げてくれます。鱧は京都が有名ですが、実は静岡県の舞阪港では遠州灘で天然鱧が日本で1番早く揚ります。遠州灘天然鱧は、魚体も大きく脂がのっていることから「旨い、走り鱧」と呼ばれていますが認知度が低い。ぜひ、静岡県の名物になってほしいものです。
梅肉でいただきます。赤白のコントラストが目にも鮮やか。
食事をよりおいしく楽しく盛り上げてくれるお酒はぜひペアリングで。日本酒よりか、ワインよりかで好みを伝えて高木大将におまかせを。さまざまな銘柄のお酒が湧くように注がれ、全く枯れる気配がありません!飲み放題と錯覚してしまうお酒好きには嬉しいびっくりなペアリングです。
もち米、菊川のとうもろこし、浜名湖の鰻
静岡県といえばやはりうなぎ。その中でも浜名湖の鰻は全国区です。地元、菊川のとうもろこし「白い恵美」と。美白美人な新品種のともろこしは、糖度は高いがスッキリ。おしのぎとして登 場、コースのウォーミングアップなので極少量。「おかわり!」と思わず叫びそうになるほど気に入りました。
刺身 アジ、カンパチ、カツオ
刺身は舞阪のアジ、御前崎のカンパチとカツオです。しょうゆも用意されていますが、満潮時に加計呂麻島へ押し寄せるミネラルをたっぷり含んだ海水を汲み上げ一週間かけて平釡で炊きした奄美大島の「加計呂麻の塩」、珍しい国産グレープフルーツ「愛媛晩柑」をメインに魚のおいしさを堪能しました。
土瓶蒸し鱧、地ハマグリ、エビ
日本酒とワインの出汁が絶品!すだちを入れても爽やかですが、筆者は出汁のみに惚れ惚れ。
鮎 九頭竜川、和良川
鮎は福井県の九頭竜川と、岐阜県の和良川の食べ比べ。どちらも鮎も食通を唸らせる鮎の産地として名をはせています。その食べ比べとはなんともぜいたく!ペアリングは日本酒。お気づきの方も多いかと思いますが、食器がにもひとかたならぬこだわりが…骨董屋などで買い集めているそう。日本酒のおちょこを筆者はいたく気に入り譲ってもらえないか?と、相談してしまったほどです。
酒盗のアイス 蒸しアワビ
お酒好きの方に支持される酒盗。魚の内臓を原料とする塩辛ですが、何と!高木大将はアイスクリーム変身させました。カツオの酒盗を卵の黄身と練って、和風カスタードを生み出し蒸したアワビと香りが良いのりで。独特の発酵感が和らぎ爽やかさをまとった酒盗のアイスはまさに大人のアイスクリームです。
白なす、イチジク味噌、生雲丹、トリュフ
夏野菜の茄子は、和とも洋ともとれるお料理として降臨。菊川産の白なすは旬を迎えるイチジクの白味噌ベースのソースがかかり、生雲丹とトリュフでおめかし。地味ななすをこんなにもラグジュアリーに変身させる高木大将に脱帽です。
トリュフすき焼き
この日の主役は、静岡県のブランド牛「遠州夢咲牛」のすき焼き。平成9年に開催された和牛のオリンピック!「第7回全国和牛能力共進会」にて、全国一となる最高位の称号「内閣総理大臣賞」さらに農林水産大臣賞をダブル受賞するというという快挙を達成した御前崎市が誇る最高級の黒毛和牛です。
まずは、マデラ酒を煮詰めて作る特製の割下とトリュフでシンプルに。ペアリングは赤ワインを。「新日本料理おぶね」のワインは、ソムリエであり、タレント、 料理評論家である、田崎眞也さんのセレクトなんです!1995年に世界最高峰のソムリエコンクールで優勝し、日本のレストラン界に「サービス」という概念を浸透させたのは彼だと言われています。
続いて、フォアグラと。赤ワインがどんどん進みます。
ラストは卵黄と。すき焼きを3度もおいしく…筆者のボルテージは最高潮!ワインも進みに進み上機嫌だっだことは言うまでもありません。
満願寺唐辛子、大葉のごはん
おなかがいっぱいなのにスルスルっと胃に吸い込まれていくフィニッシュは、京野菜の1つ満願寺唐辛子と、爽やかな風味の大葉のコラボレーション。京都では「万願寺甘唐」と呼ばれ辛みはなく肉厚で柔らかく食べやすいのが特徴です。 終始、笑顔でサーブしてくれる高木大将がとても印象的でした。
食通を唸らせる「新日本料理おぶね」
和食と聞くと上品で控えめな印象を持ちますが、「新日本料理おぶね」の和食はとても情熱的。高木大将が全身全霊を料理に注ぐその姿勢がそう感じさせるのでしょう。春夏秋冬、季節が移り変わる度に通いたい。それが「新日本料理おぶね」です。
詳細
おまかせコース 15,000円〜
ペアリング 5,500円〜
新日本料理おぶね
所在地:静岡県菊川市加茂4948
電話:0537-35-4030
営業時間:11:30~14:00(Lo.13:45)・17:30~22:00(Lo.21:45)
※前日、お昼までの完全予約制
定休日:月曜日(祝日の月曜日もお休み)