毎年、ミラノの街全体がクリエイティブな熱気に包まれる「フォーリサローネ」。その創造的な息吹を分かち合う都市型デザインイベント「OSAKA FUORI SALONE」が2025年9月10日(水)~16日(火)の期間にて大阪市内で初開催されます。それに伴い、初日の9月10日には高島屋大阪店にてオープニングセレモニーが行われました。
万博開催中の大阪で新たな挑戦となる「OSAKA FUORI SALONE」開催の背景
冒頭では、「OSAKA FUORI SALONE」の発起人であるSANEI株式会社代表取締役社⾧の西岡 利明氏が登壇し、開催に伴う挨拶を行いました。
今年は大阪・関西万博が開催されており、世界中から多くの人々が大阪に訪れるなか、西岡氏は「この特別な機会に、何か新しい取り組みを形にしたい」と思っていたそうです。
そんななかで、株式会社ユニオン代表取締役の立野 純三氏から「大阪をもっと盛り上げるために、ものづくりの面で何かできないか」と声をかけてもらったのがきっかけに。当初は、万博会場と各メーカーのショールームを巡回するイベントを実現できないか、というアイデアが出て、そこから試行錯誤しながら今回の開催に至ったとのこと。
「本日は、ようやくこの日を迎えることができたという強い思いで、この場に立っております。今回はまさに「第0回」ということで、無事に開催できることを大変嬉しく思うとともに、これまで多くの皆さまからのご協力やご尽力をいただいたこと、心より感謝申し上げます。大阪・関西万博には世界中の人々が訪れていて、私自身もその一端に関わらせていただく機会がありましたが、その経験を経て『大阪から日本の良さを発信する』という取り組みとして、日本の魅力や価値をもっと世界に示す場を大阪から創り出せないか。そうした思いを実現するために準備を進めて来ました。来年は大阪とミラノが姉妹都市提携45周年を迎えるという節目でもあり、大阪のものづくりの中でもインテリア関連の企業が一体となって何か発信できないかと試行錯誤を続けてきました。その結果、世界的なデザインの祭典『ミラノサローネ』に着想を得て街全体が盛り上がる仕組みを目指しつつ、大阪ならではの食や文化と、インテリア・デザインを融合させて、世界から憧れのまなざしを向けてもらえるような都市へと成長させていきたい」と、西岡氏は意気込みました。

続いて、大阪市⾧の横山 英幸氏によるビデオメッセージが発表されました。
同氏は、「OSAKA FUORI SALONE」は回遊型のスタイルで、高島屋大阪の会場に加えて、サテライト会場も設けられ、大阪のものづくりを多方面から体感いただける魅力的な取り組みになっている」と述べ、今後もミラノとのつながりをさらに強化し、積極的に交流を深めていきたいと語りました。
メーカー自身が発信の中心となるデザインの祭典は世界でも珍しい

その後、イベントディレクターの永山 祐子氏が登壇し、展示内容やイベント概要を説明。永山氏は、最初に今回の話をいただいた際に、「長年にわたって大阪のものづくりを牽引してきたSANEIとユニオンの2社が力を合わせ、新たな取り組みを始められるという熱意に深く心を動かされた」と語りました。
先の大阪・関西万博では、「ウーマンズ パビリオン in collaboration with Cartier」や「パナソニックグループパビリオン『ノモの国』」の2つのパビリオンを手がけた永山氏。準備期間が通常より短く、厳しい条件の中でも「大阪や日本のものづくりの底力を見せ、完成させることができたのは大きな誇りであり、今回のこのイベントとも深く通じるもの」だと述べました。
「今回は第0回という手探りの中で始まったにもかかわらず、その想いに共感してくださった多くのメーカーやものづくりに携わる方々が加わり、皆さまの前にお披露目できるようになったことを嬉しく思っています。世界にはさまざまなデザインの祭典がありますが、メーカー自身が発信の中心に立ち、本気で取り組むイベントはあまりないと感じています。だからこそ、地道に現場で手を動かしてきた方々にしか生み出せない価値があると思っていますし、今回のイベントをきっかけに人と人のつながりが新しい輪を生み出し、大阪からミラノ、そして世界へと広がっていくと信じています」(永山氏)
春はミラノ、秋は大阪へ。ミラノに負けない国際的イベントを目指して

そして、「OSAKA FUORI SALONE」の初開催を祝して、テープカットが行われたあと、トークセッションが行われました。
大阪を盛り上げるため、万博をきっかけに何ができるか

イベントも発起人である西岡氏と立野氏がさまざまな議論を重ねる中で、「大阪のものづくりを世界にもっとアピールする」という方向性が固まっていき、国際的な見本市「ミラノサローネ」を参考に構想を広げてきたと西岡氏はコメントしました。
「ミラノサローネの展示のほとんどがデザイナーやプロデューサー主導で、メーカーはサポートとして関わる形が一般的です。しかし、『OSAKA FUORI SALONE』ではメーカーが主体となって、日本のものづくりの素晴らしさや魅力を発信することを目指しました」(西岡氏)
立野氏は、「大阪も40年前までは国内外から多くの人が集まり、建築やインテリア関連の流れを把握できる展示会が盛んに行われていたが、今はほとんどが東京に移ってしまった」と実情を語りました。
今回のイベントを契機に、大阪のものづくりの伝統をもう一度復活させ、展示会を通じて大阪から世界に発信できるようにしたいと抱負を述べました。
今回のイベントでは、“陶酔するライフスタイル”をテーマに掲げていますが、西岡氏は「豊かで充実した時間を実感できるライフスタイルが実現できればという思いからテーマを設定した」とし、以下のようにテーマに込めた思いを説明しました。

「今の日本の生活は成熟してきていて、日々がとても忙しく、複雑になっています。こうした状況でも、自分自身の時間や家族との時間を大切にできる生活が送れれば、それ自体が充実感や喜びにつながるのではと思っています。ゆったりとした落ち着いた時間とエネルギッシュな活動のバランスを大切に、仕事における緊張感や挑戦が良い循環を生むことで、『生きる喜び』を感じられる瞬間が増えていくのではないでしょうか」
大阪は昔から商売の街でありながら、歴史的な神社仏閣など伝統的な建造物にも囲まれています。海外から見た日本、特に大阪のデザインの魅力や強みについて、西岡氏は「面白いもの好きの大阪人の気質と、伝統的なデザインが融合することで、新しくユニークなデザインが生まれる土壌がある」と言います。
東京が日本の中心ではあるものの、流行の発信元となるアイデアや文化は大阪から生まれることも多く、「海外から見ると東京の凛とした雰囲気と、大阪の柔らかく親しみやすい雰囲気の違いがはっきり分かる」と自身の見解を示しました。

本場のミラノサローネとの違いや共通点について、永山氏は「最近は特に街中が盛り上がっている様子が目立つが、その面白さのひとつは日常の街の雰囲気やライフスタイルを感じながら展示を体験できること」だとコメントしました。
「展示が日常の中にあることで、“生活にデザインがどう関わるか”をより身近に感じられ、共感しやすくなります。そのため、今回のイベントでは各展示の間で大阪の都市の活気や雰囲気を感じながら楽しめる構成になっている」と、体験型の展示の見どころを共有しました。
「ものづくりへのこだわりや、卓越した技術を届ける側と受け取る側が一緒に考えていけるようなサイクルを生み出せればと考えています。普段は目に触れない貴重なものが、誰でも見やすい形で体験できること自体が、非常に意味のあることだと思います。そういう意味では、デザインや設計のプロだけでなく、一般の方にも展示を見ていただきたいですね」(永山氏)
本家のミラノサローネは大きな展示場から始まりました。それが現在はミラノの市内各所でメーカーが展示を行っています。対して、「OSAKA FUORI SALONE」では大阪市内のあちこちに展示場所を設け、展示場を持つ企業は展示会場、持たない企業はサテライト会場や商業施設で、それぞれ作品を発表する形式をとることで、市内全体で一貫して展示を見てもらえる環境を整えています。

最後に、登壇者らがメッセージを述べ、トークセッションを終えました。
「春はミラノ、秋は大阪で開催し、海外からも来場者を迎えて、ミラノに負けない大規模で魅力あるイベントに育てていきたいと思っています」(立野氏)
「今回の0回目を皮切りに、来年からは第1回として継続的に開催し世界中の人々がヨーロッパと日本を行き来しながらデザイン体験を楽しめる国際的な循環型イベントに育てていきたいと考えています」(西岡氏)
「実際に深く展示を見ていくと、それぞれのメーカーのものづくりには本当に魅力があります。ものづくりの現場を見ることで、製品やデザインに対する理解やモチベーションがさらに高まりますし、一般の方でもそうした体験を通して、ものづくりへの興味を深められる入り口になればいいなと思います」(永山氏)

オープニングセレモニーの後は、「OSAKA FUORI SALONE」のメイン会場となる高島屋大阪店6F、7Fの催事スペースの展示を巡るプレスツアーが行われました。
6Fのエスカレーターを上がると、「OSAKA FUORI SALONE」のロゴをイメージした展示が目に入ってきます。また、シーティングエリアになっているので、ゆったりと寛ぐことや待ち合わせにも利用できます。

そして、7Fの展示スペースには以下の企業が出展しています。
①ケイミュー株式会社
②株式会社平田タイル
③Demold (富士工業株式会社)
④株式会社アダル
⑤中井産業株式会社
⑥ローランド ディー. ジー. 株式会社/株式会社乃村工藝社
“陶酔するライフスタイル”というテーマを軸にした建築・家具を中心に、アート性の高い暮らしを潤すモノやコトの多様な展示や体験を楽しむことができます。ぜひこの機会に足を運んでみたらいかがでしょうか。