採用活動のあり方は、この数年で大きく変化しました。従来の求人媒体や人材紹介に加え、SNS運用や動画コンテンツ、オウンドメディアなど、企業が候補者に向けて情報を届ける手段は多様化しています。企業ごとに独自の発信を行い、カルチャーや価値観を伝える取り組みも広がりを見せており、「採用は広報である」といった考え方も一般的になりつつあります。
一方で、現場に目を向けると、こうした多様な施策を“やりきれていない”という声が少なくありません。やりたいことはあるのに、実行が追いつかない。そんなジレンマを抱える企業は、決して少数ではないようです。今回、rayout株式会社が実施した調査では、人事担当者350名の声を通じて、採用現場が直面しているリアルな課題が浮き彫りになりました。施策が増えたからこそ生まれている新たなボトルネック。その実態を、データとともに見ていきます。
採用目標の達成率は約3割にとどまる現実

まず注目したいのは、採用目標の達成状況です。直近1年で採用目標を「達成できた」と回答した企業は32.6%にとどまり、およそ3社に1社という結果となりました。一方で最も多かったのは「一部は達成できたが未達成の職種・人数がある」という回答で、43.4%を占めています。
一定の採用はできているものの、目標には届ききらない――そんな“あと一歩”の状態にある企業が多いことがうかがえます。採用活動自体が停滞しているわけではないものの、成果に結びつける難しさが存在しているようです。
人事担当者の8割以上が感じる「やりきれていない」実感

この背景には、現場の強い課題意識があります。調査では、人事担当者の82.3%が「採用施策をやりきれていない」と感じていることが明らかになりました。「強く感じる」が31.7%、「やや感じる」が50.6%と、ほとんどの担当者が何らかの未消化感を抱えている状況です。
採用施策は計画通りに進めてこそ成果につながるものですが、その前段階で止まってしまうケースが多いのかもしれません。施策の選択肢が増えた一方で、それを実行しきる体制が追いついていない現実が見えてきます。
課題の本質は「人手不足」だけではない

では、なぜ採用施策はやりきれないのでしょうか。最も多く挙げられた理由は、「企画(アイデア)はあるが人手不足により実行が追いつかない」というもので、42.0%にのぼりました。さらに、「記事・動画・SNSなど制作業務の増加」(36.8%)や、「総務や人的資本管理など採用以外の業務との兼務」(36.1%)といった回答も多く見られています。単純な人手不足だけでなく、業務の複雑化や負荷の分散が、実行力を下げている要因といえそうです。
特に近年は、採用活動において“伝え方”の重要性が高まっています。その結果、コンテンツ制作の比重が増し、従来以上に時間と労力が求められるようになっている点も見逃せません。
強化したいのは「SNS・コンテンツ・動画」

こうした状況の中でも、企業が注力したい施策は明確です。今後実行したい、または充実させたい施策として最も多かったのは「SNS公式アカウント運用」(40.9%)でした。続いて「求人媒体掲載」「人材紹介」「動画制作」「コンテンツマーケティング」などが挙がっています。いずれも共通しているのは、候補者に対して情報をどのように届けるかという視点です。単に募集要項を提示するだけでなく、企業の魅力や働くイメージを具体的に伝えることが求められていることがわかります。
解決の方向性は「外部活用」と「体制づくり」

では、こうした課題にどう向き合えばよいのでしょうか。調査では、「外部パートナーの活用」(37.8%)が最も必要とされている施策として挙げられました。加えて、「業務の見直しや役割分担」「専門スキルを持つ人材の増員」といった回答も並んでいます。つまり、個人の努力だけで乗り越えるのではなく、組織として“実行できる体制”を整えることが重要だと考えられます。採用をプロジェクトとして捉え、適切にリソースを配分する視点が求められているようです。
求められるのは「推進力」と「巻き込み力」

さらに、採用活動を前に進めるために必要なスキルとして、「推進力」(51.1%)と「働きかけ力」(46.3%)が上位に挙がりました。計画を確実に実行する力と、周囲を巻き込む力が重要視されていることがわかります。
採用は単なる業務ではなく、多くの関係者が関わるプロジェクトです。社内外の協力を得ながら進めていくためには、個人のスキルだけでなく、共通認識の形成や役割分担の明確化といった“進め方”の設計が不可欠です。
採用施策を“やりきる”ための実践的な進め方とは
今回の調査から、採用現場では限られたリソースの中で「施策を確実にやりきること」の重要性が浮き彫りになりました。その実行力を支える考え方として注目されるのが、プロジェクトマネジメントの視点です。rayoutでは、採用プロジェクトを前に進めるためのポイントとして、いくつかの実践的なアプローチを提示しています。まず重要なのは、プロジェクト単体ではなく「部署としてどこを目指すのか」というゴールから逆算して整理することです。目的が曖昧なままでは、途中で施策が止まってしまう要因になりかねません。
また、「働きかけ力」とは単に周囲を動かすことではなく、関係者との共通認識をつくることにあるとされています。求職者が求めていることと、自社が提供できる価値を言語化し、社内で認識を揃えることで、施策の一貫性が生まれます。さらに、意思決定を行う人と実行を担う人の役割を明確にすることも欠かせません。責任の所在をはっきりさせることで、プロジェクト全体の推進力を安定させることにつながります。
こうした「進め方の設計」を整えることが、採用施策をやりきるための土台になるといえるでしょう。
【調査概要】
調査名:採用施策の実行状況に関する調査
調査対象:従業員規模100名以上の企業に勤務し、直近1年以内に採用活動を行った人事担当者
調査期間:2026年2月20日(金)〜2月24日(火)
サンプル数:350名
調査方法:クロス・マーケティング QiQUMOを利用した調査
※出典:rayout調べ
採用施策の選択肢は、今後もさらに広がっていくと考えられます。SNSや動画、コンテンツなど、候補者との接点は増え続けており、それぞれをどう活用するかが問われる時代です。しかし今回の調査から見えてきたのは、「何をやるか」以上に「どう進めるか」が成果を左右しているという現実でした。施策そのものよりも、それを最後までやりきるための体制や進め方が重要になってきているといえます。限られたリソースの中でも、ゴールを明確にし、関係者との認識を揃え、役割を整理することで、プロジェクトは前に進みやすくなります。採用活動もまた、一つのプロジェクトとして捉え直す視点が求められているのかもしれません。
施策が増えた今だからこそ、「やりきるための設計」に目を向けること。それが、これからの採用活動における大きな分かれ道になっていきそうです。