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経営者・社員・パートナーの「幸福の連鎖」が企業の成長資本に! 『日本ウェルビーイング研究会議』本格始動!

最近よく耳にするようになった「ウェルビーイング」という言葉。「ウェルビーイング」とは、身体、心、生活のすべてが満たされ、持続的な幸福であること。私たち一人一人の幸福が何よりも大切なのは当たり前ですが、少子高齢化や人財不足が加速する中で、個人の領域である「生活の幸福」を企業の生産性や利益を生み出す新たな成長資本として再定義し、日本経済の現場へ実装する試みがスタートします。

日本青年会議所(日本JC)と、博報堂のシンクタンクである博報堂100年生活者研究所が、共同研究プロジェクト『日本ウェルビーイング研究会議』を、国連が定めた「国際幸福デー」にあたる3月20日に発足するにあたり、先日、都内で設⽴記者発表会が行われました。

家庭こそが社会の最前線! 幸せと利益が循環する新しい経営モデルの実装

公益社団法⼈⽇本⻘年会議所 第75代会頭 加藤⼤将さん

加藤会頭は、「家庭こそが社会の最前線。心から安らげる居場所や信頼できる家族、パートナーとの関係性は、誰にとっても社会を生み出す活力になるのです。家庭の幸せが、いかに経済的合理性と両立し、企業の発展につながるかを証明する挑戦であります。日本中に幸せと利益が循環する新しい経営モデルを実装してまいりたい」と挨拶。若者が将来に希望を持ちにくいと言われる時代だからこそ、身近な家庭や地域に日常の幸せを根付かせる運動を全国的に展開していくとしました。

新たなウェルビーイング経営の指標を! カギは『生活者発想』

博報堂 執行役員 研究デザインセンター長 宮澤正憲さん

宮澤さんは、人生100年時代、企業が100年続く鍵は『生活者発想』にあると確信しているとしたうえで、「社会も地域も生活者の集合体。働く前に、父であり、母であり、地域の人であることを無視していろんな改革を進めていくと、どうしても歪みが出てくる。本来は“家庭が幸せで、働くのがすごく楽しくて、企業もうまくいく”という利益に循環していくモデルを作るのが本来のウェルビーイングの正しいやり方かなと思う。最終的にはモデル化や実証実験も含めて、1つの新たなウェルビーイング経営の指標を作りたい。微力ながら、日本企業全体、日本経済全体がより幸せに向かって動いていく、そんな活動をできれば」と語りました。

理論だけではなく実践型の取り組み

日本青年会議所 社会開発会議 議長 下坂大夢さん

日本ウェルビーイング研究会議は、日本青年会議所と博報堂100年生活者研究所が議論を重ねながら、ウェルビーイングを企業経営の中核に添える新たな研究として推進していくもので、下坂さんは、「地域の経営者同士がウェルビーイングを企業の成長戦略として捉え、持続的な利益や生産性の向上に直結させるための研究を推進する」と説明しました。

日本JCでは、加藤会頭が掲げる「真の心が生み出す幸せな国 日本」という理念に基づき、“希望が織り成す幸せな社会、国際社会と共鳴する日本の力、地域から紡ぐ日本の未来デザイン”という方針のもと様々な運動を展開。

下坂さんによると、この日のゲスト前野隆教授が提唱する“幸せの4つの因子”を、青年会所版として“幸せの種”に置き換え、日常の行動を少し意識して変えることで幸せの実感が高まるという気づきを全国に広げ、実際の行動へとつなげていく“幸せの種まき”を行っているのだとか。また下坂さんは、日本JCの最大の特徴は、全国各地で多様なステークホルダーと連携しながら社会課題の解決に取り組んできた点だと話し、それによって、今回の研究が理論だけでなく、社会と接続されたネットワークの上で推進される実践型の取り組みとなると語りました。

人を大切にする経営を『理念』から『戦略』へ

博報堂 100年生活者研究所 所長 大高香世さん

大高さんは「私たちは、人生100年時代のウェルビーイングを探求するリビングラボです。100歳まで生きることを前向きにとらえてもらえるような施策を展開することで、たくさんの希望を生み出していきたいという強い思いがあります」と挨拶。
今回の目的について、人を大切にする経営を『理念』から『戦略』へ引き上げる取り組みとしました。福利厚生による安心は組織の重要な土台だが、それだけでは企業の持続的成長は実現しないので、さらに1歩踏み込み、生活者発想を取り入れることで、持続的な利益の創出、生産性の向上、組織の競争力強化へと直結させる原型を推進。これからの時代において、企業の価値は財務情報だけでは図れず、人材の定着、組織の活力、社会からの信頼、それらを包括した新しい経営指標が求められていて、その基盤づくりをするのだとか。

研究の特徴は、生活、仕事、組織のウェルビーイングを科学し、100年続く経営モデルを地域へ実装させること。大高さんは、「経営者や社員個人の幸せ、それを支える家庭生活、そして企業としての持続的な利益、この3つが連鎖することで、企業は短期的な成功ではなく、長期的な成長を実現できます。生活面を巻き込んだウェルビーイング経営の研究は、これまで累を見ない挑戦」とした上で、最も重要なのは、“地域企業でも実装できる、規模を問わず導入できる、そんな普遍性を備えた経営モデル”の確立で、「幸せに稼ぐ地域企業が日本を動かす原動力となります。若者が定着し、経済が循環し続ける持続可能な地域社会を実現します」と力強く語りました。

研究だけでは終わらない3つの柱

研究会議立ち上げの目的は具体的には3つの柱があり、大高さんによると、研究だけだは終わらないのが特長だそう。


<第1の柱>ウェルビーイングと業績の関係研究(メカニズム解明)
社員が家族と過ごす時間の質や地域コミュニティでの充実度が、生産性や創造性、さらには企業の売上、成長にどのような影響を与えるのかを定量的に分析。従来の従業員満足度調査では見落とされがちだった生活の充実がビジネスに関与するメカニズムを明らかにしていく。

<第2の柱>独自指標「ウェルビーイング成長指標(仮)」の開発
財務情報だけでは測ることのできない、企業の未来の成長ポテンシャルを可視化する独自の物差しを開発。例えば、ライフキャリア充実度、心理的安全性など、これらのスコアが高い企業ほど離職率が低く、長期的に成長していることを実証。目指すのは幸福を語る経営ではなく、幸福で判断できる経営。

<第3の柱>地域モデル企業の創出と研修プログラムの提供
抽出された成功法則を地域企業へ試験導入し、モデル企業の認定と成果の公開。さらに、100年続く老舗企業に受け継がれてきた核や暗黙知を現代的に言語化し、再現可能な経営地として社会へ提示

100年企業への道は「経営者の志と幸せの共有」から。弱みの吐露も重要に。

プロジェクトの本格始動に先駆け、日本JCの経営者とその社員、パートナー(配偶者、家族、親友など)を対象にプレ調査が実施されました。それぞれの意識や行動を検証、分析した結果が発表されました。

100年企業の経営者のもとで働く社員は、7割以上の社員が会社のビジョンに共感し、それ以外の会社の社員と比べて1.4倍。驚くべきことに、仕事の成長実感も、そうでないと企業と比べて1.3倍高くなっていました。

また、100年企業の経営者や社員のパートナーは、相手の夢や幸せをきちんと理解しているという割合が高く、夢や目標について話を聞いているというパートナーは7割を超えていたのだとか。

さらに、100年企業では志も共有すると同時に弱みも共有しているという、“弱みの開示率”も高いという興味深い結果も。大高さんは「100年続く企業を目指す道というのは、経営者の孤独な決意ではない。幸せと志と弱みの共有がウェルビーイング経営の第1歩になるのではないか」と分析していました。

これからの時代のウェルビーイング経営

武蔵野⼤学 ウェルビーイング学部 学部⻑ 前野隆司教授

会見では、幸福学の第⼀⼈者として、産学官連携によるウェルビーイング研究と社会実装を推進し、⼀般社団法⼈ウェルビーイング学会代表理事も務める前野隆司教授とのトークセッションも行われました。

前野教授は、プレ調査について「世界中の経営学や心理学の研究で、“幸せな社員は生産性が高いし、創造性が高い。社員が幸せだと会社の利益率が高い、売り上げが高い、会社価値が高いなどの結果が出ています。そこにさらに生活者視点を加えた形で検証された、非常に興味深い結果」と評価しました。また、「利益が上がると給料が増えるから幸せになるというのは、半分正解だけど、逆が重要!まず幸せに働く。しかもライフワークシナジーで全体と幸せだと創造性、生産性が高いから結局会社の利益が出る」と、これからの時代のウェルビーイング経営の重要性を説きました。

一方で、問題点も提起し、「生活のことに踏み込みすぎるのはハラスメントじゃないかみたいな風潮もあるので、公私混同をぐちゃぐちゃにしようって意味じゃなくて、ライフとワークをきちんと分けて、幸せな家庭生活と幸せな働き方っていうのをみんなが分かり合う。非常に誤解を受けやすいリスクもあるけど、生活と仕事のこと、経営者も従業員もみんなが考えて、誤解のないようにきちんとやっていくってことが極めて大事なこと」と警鐘を鳴らしました。

最後に、前野教授は「青年会議所さんが、現在の分断の世界で、みんなが弱みを出し合って、一緒に力を合わせようよっていう調和の世界を作っていこうと向かっているのは、日本のこれから100年の希望を感じます。日本の新しいモデルを世界に発信していくキックオフ!本当に応援していますよ」とエールを贈りました。

今後の活動計画

夏には、全国の企業で実践されているウェルビーイング施策の事例を収集し、それぞれのつながりを豊かにする取り組みや、組織の活力向上につながった成功事例をまとめた「好事例レポート」を公開。このレポートでは、社員の幸福度と組織成果の関係性や、大切な人との関係性が働く意欲に及ぼす影響などを、実践企業のリアルなデータから抽出するそうです。

そして、秋には、これまでの調査・分析・事例を統合した共同研究の中間成果を発表。3つのウェルビーイングが企業の活力や離職防止、挑戦行動の増加などにどう寄与するのかを整理し、中小企業でも導入しやすい基本的なアプローチや仮説モデルを提示する予定だということです。

筆者にとっては、これまで漠然としたイメージでしかなかったウェルビーイングですが、形となって私たちの生活に好影響を与えてくれるだろう取組がスタートします。これからの日本の新しいビジネスモデルとしてどこまで浸透していくのか、日本経済の起爆剤になることを期待せずにはいられません!