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唯一無二の「陶彩画家」が2024年の干支にちなんで龍を描く!草場一壽「〜Rainbow Dragon & Dragon Ball〜虹龍と宝珠」展を開催

有田焼の生産地、佐賀県を拠点に活動する作家、草場一壽さんの陶彩画新作展「〜Rainbow Dragon & Dragon Ball〜虹龍と宝珠」が東京・渋谷区のBANK GALLERYで12月10日から17日まで開催中。その開幕に先立って、報道関係者を対象にした作家本人によるプレスレクチャーが行われました。ここではその様子を交えながら、本展の概要と見どころを紹介します。

有田焼の伝統と絵画の融合が生み出した「陶彩画」

「陶板画」は知っていても、「陶彩画(とうさいが)」を知っているという方は、おそらくアートに詳しい人の中でもそう多くはないのでは?陶彩画は佐賀県を拠点に活動する作家、草場一壽(くさばかずひさ)さんが確立した芸術ジャンル。陶板画が陶板の上に色彩を転写して作られるのに対して、陶彩画は肉筆で色付けされた細かな手仕事による表現が大きな特徴です。

1960年に佐賀県で生まれた草場さんは、今から40年ほど前から地元の伝統工芸品である有田焼の技術を使った絵画を模索し、唯一無二といえるオリジナルの芸術、陶彩画を確立しました。原宿・キャットストリートのBANK GALLERYにて1週間限定で開催中の本展では、来年2024年の干支「辰」にちなみ、草場さん自身も長年描き続けてきた「龍」をテーマにした新作6点が出展されています。

「通常、焼き物というのは、素地の器を1300度くらいで焼く素焼きと、780度から800度で焼く上絵付けという2種類の焼き方しかありませんが、陶彩画は1300度から700度まで、15段階の温度の違いで起こる色の変化を拾いながら繊細なグラデーションを作っています。器の場合は窯に入れるのは多くても3回であるのに対して、陶彩画は絵付けを繰り返しながら平均で15回ほど窯に入れて、3か月ほどの時間をかけてひとつの作品を作り上げます」

プレスレクチャーを行う草場一壽さん

レクチャーの冒頭で陶彩画の技法について、そう解説してくれた草場さん。陶彩画は同じ絵の具で塗っても、焼く温度によって色味に違いが出るのだといいます。さらに陶彩画は、鉱物同士の化学反応によっても出来栄えが変わる芸術。例えば、水彩画ならば赤と白の絵の具を混ぜることで簡単にピンクを作ることができますが、陶彩画は物質同士の反応によってさまざまな変化が起こり、二度と同じ色が生まれることはないそう。

「陶彩画を通じて学ばされたのは、どれだけがんばって絵付けをしても、必ず3日間は窯の中に託さなければならないということです。それで思ったような色が出ないこともあれば、割れることもありますが、自分から手放すことで得られるものもたくさんあります」

草場さん自身がそう語るように作家自身も完全にコントロールできないところが、紙やカンバスなどに描かれる絵画とは異なる陶彩画の魅力であり、面白さといえるのです。

超絶技巧の手仕事から放たれる、七色の煌めき

「機械や便利なものに頼ってばかりでいると、仮にそれらがなくなった時に何もできなくなってしまった時に不自由になってしまうので、釉薬の調合から自分でできる範囲のことは自分でやるというスタイルをとっています」

手作業へのこだわりをそう語ってくれた草場さん。会場ではまず、草場さんがライフワークとする、神話の神々や菩薩などの仏をテーマにした作品を見ることができます。

実際に生で見る草葉さんの作品は、磁器と釉薬のセレンディピティが生み出す七色の煌めきがお見事。柔和な色合いの中で描かれる神や仏の姿は、見る側に癒しを与えてくれます。

左:〈瀬織津姫〉 右:〈国常立命(金龍) またの名をニギハヤヒ 艮の金神〉

そうした陶彩画の妙味は写真では伝わりづらいところ。ぜひ会場に足を運んで、ご自身の目で体感していただきたい魅力です。

2024年の干支・辰にちなんで描かれた「龍」の最新作

そして今回の展示の中で最新作となるのが、最上階の展示スペースで見られる〈虹龍 〜宝珠を得たり〉〈富士に虹龍〜希望の地へ〜〉〈龍聖母)〈夢〉〈目覚め〉〈大好き〉の6点です。

「来年が『辰年』ということにもちなんでますが、ここ数年、コロナ禍によって低迷してきた人々のエネルギーを少しでも上向きにしたいと思い、今回の展覧会は『龍』をテーマにしました」

龍も元来、草場さんが長きにわたって描き続けてきたテーマです。様々な国々を旅してきた草場さんは、各地に残された龍の伝説を研究し、自らの作品に投影してきたといいます。会場では、このうちの4点について草場さんから次のような解説がありました。

〈龍聖母)

「私たちの命は、お父さんとお母さんからいただいたものだけれど、もう一つ、やはり自然の大きなはたらきがあってこそ、私たちの命は35億年ともいわれている命の歴史の中で生まれてきた。そういうことを考えながら、実際にこういう人がいるわけではないけれども、僕たちの命、魂を育てて守ってくれる大いなる存在ということで龍聖母を描きました」

〈夢〉〈目覚め〉〈大好き〉

左から順に、〈夢〉〈目覚め〉〈大好き〉

「私が幼子を描くのは、聖書にも仏法にも、幼子の心を持ってないと天国の門は開かないと書いてあるからなんです。だから、インナーチャイルドという言葉があるように、どんなに大きくなっても僕たちは小さい頃から何も変わってないんです。見た目は変わって人生経験を積んで処世術を積んでも、何が好きで、何が心地良くて、どういうことが楽しいかというところは、実はあまり変わっていない。その小さな時の気持ちを忘れてしまっている方々も多いので、幼子をイメージして、来年の辰年にちなんで龍とコラボレーションをさせています」

長い胴体と美しい鱗を持つ龍は、七色のグラデーションを映し出す陶彩画と相性のいいモチーフといえるでしょう。空を掴む龍、幼児と遊ぶ龍、そして龍聖母など、さまざまな龍の姿からは、辰年の来年に向けた力強いパワーがもらえるはず。

命があること。その奇跡を讃えてくれる「如意宝珠」

自然を愛し、20年以上にわたるホスピスへの慰問を続けてきた草場さんの言葉は、あらゆる「いのち」に対する賛美に満ちており、それらは作品に添えられた詩からも受け取ることができます。そして、その思いが絵の中に映し出されているのが「龍の玉 如意宝珠」シリーズです。

「龍の玉 如意宝珠」シリーズ

「宇宙のはじまりといわれるビッグバンから一度も途切れることなく生命がつながって今の私たちがいる。そして、私たち一人一人も宇宙と同じように何かを生み出す大いなる力を持っています。つまり、何をせずとも私たちがここにいること、それ自体に最高の価値があると考えた時に、この『如意宝珠』が浮かんできました」

本作への思いをそのように語ってくれた草場さん。さまざまな色で描かれた宝珠の中に、果たして皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。

草場一壽さんの陶彩画新作展「〜Rainbow Dragon & Dragon Ball〜虹龍と宝珠」は、12月10日から17日まで東京・渋谷区のBANK GALLERYで開催中。実物を見なければ伝わらない七色の煌めきを鑑賞しに訪れてみてください。


草場一壽「〜Rainbow Dragon & Dragon Ball〜虹龍と宝珠」
開催期間:2023年12月10日(日)から12月17日(日)
会場:BANK GALLERY (〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6-14-5)
入場:無料

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