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猛暑・感染症・夏バテから子どもを守る!小児科医ママが教える育免アクション

記録的な暑さが続く2025年の夏。日差しは容赦なく照りつけ、屋外での活動がためらわれる日も少なくありません。そんな過酷な季節に、特に注意が必要なのが、体温調節や免疫機能がまだ未熟な乳幼児や学童期の子どもたちです。気温の高さだけでなく、湿度の上昇や感染症の流行も重なり、いわば“夏の三重苦”といえる状況が子どもたちの体調をじわじわと脅かしています。

「子どもが体調を崩すのは仕方ない」と見過ごしてしまいがちな時期だからこそ、いま一度、親の側の“気づき”が求められています。そんな中、小児科医であり保育士でもある工藤紀子先生は、「夏こそ、免疫を育てるチャンス」と語ります。暑さによる食欲低下や睡眠不足が免疫力を削ぐ今だからこそ、日常の中にある“ちょっとした工夫”が、子どもの体を守る大きなカギになるというのです。

今回は、そんな酷暑のなかでも子どもと安心して過ごすために、医師が推奨する「育免(=免疫を育てる)」アクションを紹介。すぐに実践できる外出・食事・生活習慣のヒントから、親子で楽しめる時短レシピまで、家庭でできる対策をひもといていきます。

暑さとウイルスに勝つ体づくりとは? 令和キッズの免疫を育てる

2025年の夏は、例年以上に過酷な気象条件が続いています。日中の気温は高く、湿度も高い。そして感染症の流行──子どもたちの健康を脅かす「高温・高湿度・高感染率」という“3つのリスク”が重なる中、私たちは何に気をつけるべきなのでしょうか。

まず注目したいのは、子ども特有の身体的特徴です。大人よりも背が低い子どもは、地面からの照り返しを強く受けやすく、同じ空間にいても実は体感温度がまるで違います。さらに、体温調節機能も未熟なため、汗を上手にかけず、体内に熱がこもりやすい傾向があります。そのため、熱中症のリスクは大人以上に高く、見過ごすと重篤化しかねません。また、近年の子どもたち、いわゆる“令和キッズ”は、コロナ禍による生活制限の影響で、自然な感染経験が少ないまま成長している子も中にはいます。ワクチンによる防御はあっても、日常的なウイルスとの接触によって鍛えられる“実戦的な免疫力”が十分ではない可能性もあり、手足口病や胃腸炎、とびひなど、夏に流行しやすい感染症にかかりやすく、重症化リスクも懸念されています。そんな背景から、近年注目されているのが「免疫を育てる=育免(イクメン)」という視点です。これは単に予防接種を受けるだけでなく、日々の生活習慣の中で免疫の土台を育むという考え方。腸内環境を整える食事、良質な睡眠、ストレスの少ない生活──そういった基本の積み重ねこそが、夏バテや感染症に負けない体をつくっていくのです。小児科医で保育士でもある工藤紀子先生は、「夏の健康リスクに対応するには、特別なことよりも、日常のなかで続けられる“ちょっとした意識”が大切」と話します。子どもたちの体を守るには、暑さを“避ける”だけでなく、体を内側から“育てていく”アプローチが欠かせません。

外出・食事・日常の3つの場面でできる“育免アクション”

子どもの免疫力を育て、夏の体調不良を予防するためには、特別なことをする必要はありません。日々の生活の中で、少し意識を変えるだけでできる“育免アクション”が数多くあります。ここでは、小児科医・工藤紀子先生が提案する、外出・食事・日常の3つのシーン別に「すぐやる」対策を紹介します。

【外出編】「出ない勇気」と“15分給水タイマー”

夏はレジャーの予定が増える時期ですが、子どもの健康を第一に考えるなら、「行かない」という選択肢も時には必要です。熱中症警戒アラートが出ている日は、無理をせず室内で過ごす“出ない勇気”を持つことが大切です。また、海やプール、遊園地など日陰が少なく暑熱環境に外出時は水分補給を徹底するために例えば「15分ごとの給水タイマー」を活用しましょう。スポーツをするときは経口補水液を前夜から取り入れておくことや、保冷バッグに凍らせた飲み物を携帯し、時折手のひらや首周りを冷やしたり、適宜水分摂取をすることで、体温上昇を抑える効果も期待できます。

【食事編】“シンバイオティクス”で腸を整える

夏の暑さで食欲が落ちると、どうしても冷たい麺類や糖質中心の食事に偏りがちです。しかし、免疫力を保つうえで重要なのは、腸内環境を整える食事。ヨーグルトや納豆などの「菌(プロバイオティクス)」と、バナナやオクラなどの「菌のエサ(プレバイオティクス)」をセットで摂る“シンバイオティクス”を意識しましょう。さらに、成長期の子どもに欠かせないタンパク質・ビタミン・ミネラルもしっかり補うことが重要です。冷たいメニューでも、トッピングの工夫ひとつでバランスの取れた食事に変えることができます。

【日常編】“洞窟寝室”と親子で楽しむゲーム活用

夏の早朝日差しや夜の寝苦しさは、子どもの睡眠の質を下げ、体調不良の引き金になります。おすすめは、部屋を“洞窟”のように整えること。遮光カーテンで朝日を遮り、エアコンを使い、室温を適温(25~28℃)に保ち、湿度も40〜60%を目安にすると快適な睡眠環境が整います。また、家の中での過ごし方も工夫次第。ゲームを一方的に制限するのではなく、親子で一緒に楽しむスタイルに変えることで、ゲームの区切りで無理なく切り上げることができます。体を動かすゲームを取り入れることで、運動不足の解消にもつながります。

簡単・時短・栄養満点の“育免”ひんやりレシピ

日々の献立を考えるだけでも大変な中、暑さで食欲が落ちてしまう夏の食事は、さらに悩みのタネになりがちです。そんな時こそ頼りになるのが、“ひんやり&時短”の免疫応援メニュー。冷たくてのど越しがよく、しかも栄養バランスにも配慮された3つのレシピを、小児科医ママが提案しています。

1. カレーヨーグルトそうめん

冷たいそうめんに、ヨーグルトとカレー風味のタレを合わせた一品。トマトやオクラ、ゆで卵をトッピングすることで、タンパク質・ビタミン・ミネラルをしっかり補給できます。ヨーグルトで“菌活”をしながら、ネバネバ野菜で腸にうれしい水溶性食物繊維もプラス。


【材料(2人分)】
(ヨーグルトだれ)
Aヨーグルト:120g(大さじ8)
Aめんつゆ(4倍濃縮):大さじ2
Aカレーパウダー:小さじ1
トマト(小):1個
オクラ:2本
ゆで卵:2個
そうめん:2束

【作り方】
①Aの材料を全て混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やしておく。
②オクラはさっと塩ゆでし薄切りに、トマトは1.5㎝角に切っておく。ゆで卵は半割にしておく。
③そうめんは表示通りにゆで、流水で洗いながら冷やして水気をよくきる。
④器にそうめんを盛り、①をかけて②の具材をのせる。

◎ポイント
そうめんの手軽さとカレー風味の食べやすさで、食欲がない日でもスルッと食べられます。

2. ヨーグルトとツナの冷や汁

ツナとヨーグルト、みそをベースにした冷や汁は、ごはんにかけてサラリといただける夏の定番アレンジ。雑穀ごはんの食物繊維と、すりごまのビタミン・ミネラルで免疫サポート効果も期待できます。冷たい汁物でも、温かみのある味わいが楽しめます。


【材料(2人分)】
Aヨーグルト:200g
Aツナ水煮缶:1缶
Aみそ:大さじ2
A砂糖:小さじ1
Aすりごま:大さじ2
A冷水:100ml
きゅうり:1本
塩:少々
雑穀ご飯:2膳ぶん
いりごま:適量
おろし生姜:お好みで
ごま油:お好みで

【作り方】
①Aの材料を全て混ぜ合わせ、冷蔵庫で冷やしておく。
②きゅうりは小口切りにし、塩でもんで水けを絞っておく。
③器に雑穀ごはんを盛りつけ、①をかけ、②をのせごまをふる。
④お好みでおろししょうがやごま油を添えていただく。
※大人向けにはおろし生姜のほか、小ねぎや大葉やみょうがなどを添えても

◎ポイント
調理も洗い物も少なく、忙しい日や帰省後の食卓にもぴったり。

3. バナナ甘酒ヨーグルトアイス

バナナ・甘酒・ヨーグルトを混ぜて冷凍するだけの、罪悪感ゼロの手作りアイス。乳酸菌と食物繊維、ミネラルが一度に摂れ、砂糖不使用でもバナナの自然な甘みで満足感のあるデザートになります。子どもと一緒に作っても楽しいレシピです。


【材料(4人分)】
ヨーグルト:100g
甘酒:125ml
バナナ(完熟):2本(200g)→正味150g

【作り方】
①全ての材料をジッパー付き保存袋に入れ、バナナの粒が少し残る程度に揉みこんでよく混ぜる。
②保存袋のままなるべく平らに伸ばし、冷凍庫で2~3時間冷やす。
③一度取り出して揉んで崩し、器に盛る。

◎ポイント
手作りならではの安心感。お好みでココアやきな粉、砕いた全粒粉ビスケットを加えてアレンジも。

小さな工夫が、大きな安心につながる夏へ

夏の子育ては、ただでさえ気力も体力も消耗しがちです。そこに加わる酷暑や感染症のリスクは、親にとっても大きなプレッシャーになることでしょう。ですが、今回紹介した“育免アクション”は、特別な道具や難しい知識を必要とするものではなく、毎日の暮らしの中で誰もができる小さな工夫ばかりです。

「水分補給をタイマーで意識する」「ヨーグルトと野菜を意識的に食べる」「寝室を快適に整える」といった、シンプルながらも確かなアクションが、子どもたちの健やかな成長と免疫の土台を支えてくれます。そして何より、こうした積み重ねが、親にとっての“安心感”にもつながっていくはずです。

この夏をどう乗り越えるか──それは、家族の健康と向き合う大切な機会でもあります。無理せず、でも油断せず。育児のなかに“予防”と“成長”を組み込みながら、親子で元気に夏を楽しんでいきたいものですね。